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英語学習者にもおすすめ『Flipped』

Wendelin Van Draanen,Ember; Reprint, 2003

※2020年5月現在未邦訳の洋書です

残念ながら日本では未公開ですが、映画化もされている作品です。

視聴手段が限られていて、残念ながら私は未視聴なのですが……どちらの主人公もイメージぴったり!

目次

↓ピンときたらおすすめ

  • 思春期の少年少女が主人公(ダブル主人公)
  • 二人が小学二年生の時に出会い、中学生になるまでの話
  • 男の子視点と女の子視点、両方を楽しめる

あらすじ

ブライスとジュリは向かいの家に住む同い年の幼馴染。
小学二年生の時にブライスが向かいの家にやってきたその日から、ジュリはブライスに夢中です。

一方のブライスはジュリのストレートかつ迷惑な愛情表現に辟易し彼女を避けています。
小学二年生から中学生になるまで続いた「ジュリの一方的な愛情表現から逃げるブライス」といった関係性はブライスが決定的にジュリを傷つける事件が起きてから大きく変化することに。

ブライスがジュリの方を向いた時、ジュリはもうブライスの方を見ていませんでした。
二人の結末はどうなるのでしょうか。

感想

幼馴染の恋を扱った作品ではありますが、幼馴染ものにありがちな甘酸っぱい恋心的な可愛らしいシチュエーションはありません。

この二人は幼馴染でこそありますが、仲良くはないのです。笑

この『flipped』という作品は二人がお互いのことをほんとうの意味で正しく認識していくまでの過程を描いたお話です。

物語はブライス視点とジュリ視点、交互に進んでいきます。

お互いの視点から語られる同じ出来事から両者の考え方や思い違いが判明するような面白い構造になっています。

ブライスは父親譲りの美しい容姿で学校の女の子たちからもモテモテ。

意地悪をする性格ではないけれど気弱で八方美人なところがあり、つい周りに流され、そのつもりはなくとも誰かをひどく傷つけてしまう結果を招いてしまうことがあります。

一方のジュリは空気が読めないところがあったりして、学校でも変わり者扱い。

ブライスから迷惑がられているのにも気が付きません。

一方で物事への知的好奇心を活かした深い知性や人生への哲学的な見方ができる一面もあります。

おそらく多くの読者が最初はブライスに同情し、次にジュリに同情するという流れをたどると思います。

個人的にはブライスの弱さも共感できてしまうものでした。

ブライスのお父さんはハンサムですが、人を見下す差別的な発言が多くブライスに対しても高圧的。

彼が人の顔色を窺うのが癖になっているのも無理からぬことかなと感じます。

ジュリの方はブライス父とは対照的な愛に溢れた父のもとでのびのびと育った影響か、はじめからしっかり自分を持っています。

ジュリとブライスどちらも作中の出来事を通して成長するのですが、ブライスの成長はジュリ以上に大きな一歩だったのではないかなと思います。

周りの目をはじめから気にせず変人扱いされているジュリと、周りの目を気にしすぎてしまうブライス。

だからこそ、そんなブライスが覚悟を決めた時のカタルシスも大きく、ずっと流されて続けていた彼が最後に放った言葉はスカっとしました。

終わり方も綺麗です。

すれ違い続けた幼馴染のなが~い序章が終わりようやく始まるんだなという爽やかな希望に満ちた素敵なラストです!

この作品には様々なテーマが込められていると思うのですが、私が一番印象に残ったのは

Seeing beneath the surface(うわべの下にあるものを見る、見かけでなく本質を見るの意)」という言葉。

表面だけを見て判断しているのはジュリとブライスだけではありません。

二人の家族もまた、表面上の付き合いだけでお互いを知った気になっていてそれも二人の関係をこじらせるのに一役買っているのです。

その人を知ろうとする前にその人の人となりを勝手に判断してしまうこと。知ろうともしないこと。

それがいかに勿体ないことかということについて考えさせられました。

ジュリとブライスの二人が悩みながらも周りの大人(特にジュリの父とブライスの祖父の言葉は素敵な言葉が多いです)に支えられて成長していく様子に不思議と癒され、励まされます。

flippedには「反転・ひっくり返る」といった意味がありますが、お互いへの思いがひっくり返る様子、ブライスの価値観がひっくり返るさまなど作中の様々な場面を表現したぴったりのタイトル。

スラング多めかつ独特の言い回しが時折ありますが概ね読みやすいです。

表紙が可愛いのも素敵ポイント。お勧めです!

Wendelin Van Draanen,Ember; Reprint, 2003
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