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「夢のクレヨン王国」25周年によせて~欠点だらけで大丈夫!~

© 福永令三・講談社・東映アニメーション

2022年は「夢のクレヨン王国」が放映されてから25周年!

Blu-ray Boxが2月25日に発売されると聞き、懐かしの大好きなアニメを振り返ってみたくなりました。

ちょうど昨年の秋ごろからのんびり原作を読み返していたところだったのですが、原作とはだいぶ雰囲気が異なります。
原作には原作の良さがあるのですが、アニメは子供向けとして本当に上手にアレンジされているんです。

子どもの頃、原作はアニメで放映されなかったシルバー王女の旅がたくさん見られるんだ!と勘違いして読み始めたのですが…
実は、全47巻に及ぶ原作クレヨン王国シリーズはその多くが一巻ごとの完結ものとなっていて基本的に主人公は巻ごとに変わります。※例外あり

シルバーがメインに据えられているのはその中の『十二か月の旅』『新十二か月の旅』『シルバー王妃花の旅』『しっぽ売りの妖精』の4作。

この『十二か月の旅』『新十二か月の旅』『花の旅』をミックスにした展開がアニメ「夢のクレヨン王国」となっています。
(『しっぽ売りの妖精』は、アニメ終了後に出版されました)

東映アニメーション「夢のクレヨン王国」公式サイトより引用
©福永令三・講談社・東映アニメーション1

※この記事は東映アニメーション「夢のクレヨン王国」公式サイト様より画像を引用させていただいております

目次

原作との大まかな違い

シルバーの年齢

原作では『12か月の旅』時点で21歳。かつ既婚者であるシルバー。
「彼女にふさわしい仕事は王妃以外に見つからなかった」という理由から(すごい理由だ)ゴールデン国王に引き合わされ、めでたく結婚したことで王妃となります。

12の悪い癖を持ちながらも、チャーミングな魅力あふれるキャラクターです。

シルバーの悪い癖リストがこちら↓

ちらかしぐせ
おねぼう
うそつき
じまんや
ほしがりや
へんしょく
いじっぱり
げらげらわらいのすぐおこり
けちんぼ
人のせいにする
うたがいぐせ
おしゃれ3時間

福永 令三(2011)講談社; 新装版

一方、アニメのシルバーは12歳の王女となっています。

©福永令三・講談社・東映アニメーション2

原作より幼いこともあり、更に輪をかけて我儘お姫様!
それでも、可愛らしいデザインと声優の徳光由禾(当時の名義は徳光由香さん)さんの愛嬌たっぷりの声の魔力でちっとも憎めません。
子供向けアニメでは異色ともいえる奔放ぶりが好きです。

旅に出る経緯

原作では旦那であるゴールデン国王が12の悪い癖を持つシルバー王妃に愛想をつかし逃亡。国王を連れ戻すためにシルバー王妃は旅に出るという流れ。
ちなみに王様とシルバー王妃はなかなかの歳の差婚の様子。

©福永令三・講談社・東映アニメーション3

アニメでは、かつて封印された死神が復活、更に突如やってきた謎の少年クラウドによって両親が石に変えられてしまう…という出来事から物語が始まります。
両親をもとに戻すため、シルバー王女は死神を再封印する旅に出ることになり、その過程で自分の悪い癖と向き合うという展開です。

石にされてしまったシルバー王女の両親は原作とは別人なのですが、この両親二人とも優しくてふわふわしていて大好きです。シルバーを溺愛してるところも可愛い。

クラウドの存在

©福永令三・講談社・東映アニメーション4

クラウドは原作では存在しないアニメオリジナルキャラクター。原作における「ゴールデン国王」の立ち位置として、シルバー王女が行方を追う相手となります。

オリジナルキャラクターは、原作の良さを生かしも殺しもする非常に扱いの難しいものだと思いますが、この作品においては大成功だと思います。
夢クレを語るうえで欠かせないキャラクターです。

シルバーのお供たち

シルバーの旅は仲間と共に行う賑やかなもの。
この点に関しては原作とアニメで相違はありません。

原作のシルバー王妃は『十二か月の旅』では人間の女の子ユカと。
『新十二か月の旅』では12の野菜の精と。

『シルバー王妃 花の旅』ではニワトリのアラエッサ&ストンストンと旅に出ています。

何人呼び出しに応じるかは野菜の精の気分次第©福永令三・講談社・東映アニメーション5

一方アニメにおいてユカは登場しません。
(これはシルバーがユカと同年代になったことが影響していると思われます)

かわりに鶏のアラエッサと豚のストンストンが旅の相棒的ポジションに。
野菜の精は、お助けキャラクター的扱いで普段は香水瓶の中に収納されています。

ちなみにアラエッサの声は「おかあさんといっしょ」7代目歌のおにいさんであるおさむお兄さんが担当しています。この声がまたキャラにあっていて何年たっても脳内再生余裕です!

アニメ「夢のクレヨン王国」のここが魅力!

シルバーとクラウドの関係

↑二人の関係性がばっちり表れていて好きです

シルバー王女からすれば、いきなり両親を石にしたクラウドはいわば仇相手なのですが、その関係性が物語が進むごとに変わっていくところも見どころの一つ。

この二人のやり取りが大好きだった人たちはたくさんいるはず!
最初はシルバーより身長が小さかったクラウドの背がだんだん伸びていくのもいいんですよね…。

歌の魅力

中毒性のあるopの「ン・パカマーチ」からはじまり、EDのしっとりとした「ありのままに」といい名曲ぞろい。

挿入歌も例外ではありません。
月ごとに歌が用意されているのですが、どの曲もいい曲。
「ありのままに」と同じくどれも原作にある詩に音楽がつけられたもの。
詩の意味や雰囲気がいっそう感じられて胸に響きます。

欠点=悪いものという捉え方をしない

「悪い癖を直す」というあらすじだけ見ると欠点は排除し改めるべきものだという圧を感じてしまうかもしれませんが、実際はそんなお説教らしさはありません。

こめられているのは、行き過ぎるのは困りものだが、欠点は美徳の裏返し。だからそれを認め、受け入れて活かそうというメッセージ。

原作だとわかりやすいのですが『12か月の旅』はまさに「悪い癖はよくない!だから直そう」という展開になっていました。

そして、続編の『新十二か月の旅』の王妃がどうなったかというと…

誰もが認める完璧王妃様になったにも関わらず、周りには"昔の王妃様の方が魅力的だった"とこっそり思われ、シルバー自身も幸せを感じられなくなってしまうのです。

なぜときかれたら こまるけれど

むかしは すべてがかがやいていたわ

もっと空も青かったし もっと紅茶もおいしかった6

癖をなくそうとするあまり、自己否定に苦しむシルバー王妃。
今度は悪い癖を持った(そしてそれをちっとも気にしていない)12人の野菜たちと旅をすることで、欠点の裏側の美徳・完璧ではないものの魅力に気が付いていくのです。

"悪い癖"と言ってしまうのでややこしくなりますが、ようはパターンなんですよね。

つい繰り返してしまうこと。それも無意識に。

実際、アニメ1話のシルバー王女は皆に悪い癖のことを指摘されるときょとんとしています。

「私、悪い癖なんてないわよ?」と。

そんなシルバーも、旅の過程で自分の癖が招いた結果を繰り返すうち「次は気を付けよう…」というスタンスを少しずつ身に着けています。

シルバーの旅は、自分で選択して、その結果を引き受ける…という繰り返しによって自分の行動のパターンに気が付いていくものなのだと思います。

そこに自己否定は必要ないし、癖を完全に失くしてしまう必要もない。

けちんぼだからこそ大事な時に必要なものが手元に残せていたり、神経質な気質を持っているからこそ、その分他の人の気付かない・気にもしないところに目が届いたり。
癖のせいで痛い目にあうこともあれば、癖に助けられることもある。

EDの「ありのままに」は、まさにそんな視点から書かれた人間賛歌。

歌い出しの「この花もその花も ありのまま色美しく」から「あの人もどの人もありのままに心やさしく」につながっていくのですが、自然を愛した福永さんならではの詩ですね。

著作にも花や木がたくさん登場しますし、自然破壊への問題提起を物語を通して何度も伝えてきた福永さん。
人間は自然の一部なのだという一体感を強く持っていた人だったんだろうなと。

なにより、自分のありのままを肯定しつつ、さらりと「あのひとも」そうなのだと歌っているところがとても好きです。

自分のいびつな部分をゆるし、あの人のいびつな部分もそのままにしておく。
これって簡単なことではないと思いますが、そんな視点を子供向けアニメのなかで提供してくれたことが有難かったなあと、かつての視聴者の一人として思うのです。

原作を読み返していて気が付いたのですが、クレヨン王国は良い子の世界ではなく、みんなが勝手気ままに暮らして調和がとれた世界。
シルバーだけでなく、王様やカメレオン総理、大臣や住人も…みんな読んでいて「あれ?」とひっかかる部分を持っています。結構それぞれ自分勝手です。
でも、それが自然なあり方なんだと思います。

みんなが聖人みたいに生きることができたらそりゃあすごいけれど、不完全な部分を許し合って生きることのほうがきっと簡単。

こうした欠点への捉え方は『霧のむこうのふしぎな町』にも通ずるところがあるかな。

あわせて読みたい
ひと夏の成長物語『霧のむこうのふしぎな町』 ごく短い児童向けの物語ですが、何度読み返しても面白いです。 子どもの頃から、今に至るまで。めちゃくちゃ通りの魔法使いたちに何度も元気をもらっています。 【あら...

かつてクレヨン王国を導いた高名な武烈女王も、実はシルバー王女以上に悪い癖の数々を持っていたことが物語の途中で明らかになります。
彼女が歴代王妃の中でも、名を残すことになったのはその欠点を正しく活かしていたからなのでしょう。

あれから25年経ったシルバー王女も、素敵な王妃となってクラウドと共にクレヨン王国を治めているんでしょうね。

Blu-rayといい携わってくださった制作陣・関係者の方々には、本当にありがとうございますと伝えたいです。
改めまして「夢のクレヨン王国」25周年おめでとう!

© 福永令三・講談社・東映アニメーション

Blu-rayが待ちきれずに配信サイトを調べたところ2022年1月現在バンダイチャンネルビデオマーケットgyaoのみ。
どのサイトでも1話は無料視聴可能ですが、見放題対象ではないので2話以降各話110円ずつかかります。(レンタルなので視聴期限アリ)
配信サイトで見たい方はこの中ならビデオマーケットが初月無料で最初にポイントを配布してくれるのでお勧めかなと。


新しく見てくれる人が増えたら嬉しいので、もっと取り扱う配信サイトさんが増えてくれればいいな~と思っています。
ちなみにDVD BOXの方はプレミアがついていて現在amazonで最安値でも85000円、相場は10万越えとなってます…😱

Footnotes

  1. https://www.toei-anim.co.jp/tv/crayon/assets/images/top/p_mainv_pc.png
  2. https://www.toei-anim.co.jp/tv/crayon/assets/images/character/p_main_01.jpg
  3. https://www.toei-anim.co.jp/tv/crayon/assets/images/info/p_info01.png
  4. https://www.toei-anim.co.jp/tv/crayon/assets/images/episode/p_main_13.jpg
  5. https://www.toei-anim.co.jp/tv/crayon/assets/images/episode/p_main_02.jpg
  6. 福永令三(1988)『クレヨン王国新十二か月の旅』講談社, p.12
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