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女性ジョッキー主人公の熱いスポーツ小説!『風の向こうへ駆け抜けろ』『蒼のファンファーレ』

一作目『風の向こうへ駆け抜けろ』と続刊『蒼のファンファーレ』の感想をまとめて書きます。

とても美しい装丁に惹かれ手に取ったのですが、最高に楽しいスポーツエンタメ小説でした!

堅実な文章から紡がれるレース描写の熱さは必見。

巧みな描写から馬の疾走感を肌で感じ、レースの展開に夢中になって一息に読みふけりました。

目次

あらすじ

行き場のなくなったものが行きつく先だと揶揄される緑川厩舎。
地方競馬会にデビューした18歳の瑞穂は、そんな緑川厩舎に配属され、男社会の競馬業界のなかで偏見や心ない言葉にさらされますが、決してあきらめません。
虐待をうけ、心を閉ざした馬フィッシュアイズとの出会いを経て、ついに狭き門である桜花賞レースにも出場を果たす――
というのが一巻『風の向こうへ駆け抜けろ』のあらすじ。

続編にあたる『蒼のファンファーレ』では、瑞穂が19歳になり、緑川厩舎に普通ではまず送り込まれてこない超良血統の馬ティエレンがやってくるところから始まります。
馬主は中国の風水師、ミスター・ワン。
なにやら彼の思惑は、ティエレンとフィッシュアイズの対決にあるようで…。

※瑞穂は学生ではありませんが、18・19歳という年齢からカテゴリ分けの際「高校生」「大人」に分類しました。

追記:NHKにて『風の向こうへ駆け抜けろ』が平手友梨奈さん主演でドラマ化しました。
瑞穂の性格がちょっときつめに変更されていたり、二話構成のために駆け足になっていたりする部分はありましたが、どのキャストさんも驚くほどイメージにぴったり!
平手さんのスタイルが良すぎて毎シーン見惚れてました。

感想

こういったスポーツにおける感情の高ぶりは、ビジュアルでダイレクトに訴えることのできる映画や漫画の方が有利な印象を受けていたのですが、本書はそれにも劣らぬ熱さです。

ページをめくるのも、もどかしい。そんな風に思うくらい、レースの展開が知りたくて知りたくて気が急きました。

女性差別を逃げずにきちんと描写しつつ、それでいて瑞穂から見た世界の視点だけに肩入れしないところも個人的に素敵だなと思うポイントです。

例えば、瑞穂を敵視する男性ジョッキー御木本の視点では、厳しい勝負の世界の中で女性と言うだけで注目され、名前を憶えてもらえる女性ジョッキーへの批判的な気持ちなどが描かれています。その女性ジョッキー枠の裏で、仕事を失う同業者に胸を痛めながら。

女性ジョッキーの方も、タレントのような仕事を決して何も考えず受けているわけではありません。

社会から期待される「女性ジョッキー像」に葛藤しながら、時に傷つきながらやってきている描写がされているので、御木本の見方には頷けないのですが……事情を知らない第三者から見ると確かにそう見えるかもしれないと考えてしまいました。

瑞穂も、御木本も、女性ジョッキーをタレントのように扱う広報も、それぞれ違った観点からですが、競馬を尊重し、自分の信じる価値観に従って行動を起こしているのは同じ。その姿が眩しかったです。

馬との絆は勿論、人間同士で紡がれるドラマにもぐっと惹きつけられて魅力的な本書。

二巻で登場する、先輩女性ジョッキーの冴香もとても良いキャラクターです。

特に冴香と瑞穂がお互いの全てを出し切って競ったレース後の会話がお気に入り。何度も読み返しています。

冴香と瑞穂は、レース場でもプライベートでも一人の男性をめぐってライバル関係にあたるのですが、そういった複雑な感情すべてを超えた先にある、深いところでの「仲間意識」にじ~~んときました。

恋愛対決では冴香がリードしているので瑞穂も負けずに頑張ってほしいところですが、私としてはここで御木本氏にぜひとも頑張っていただきたいです。

強い対抗意識と恋愛的な意味での気になるが混ぜこぜになって瑞穂相手に巨大な感情をもてあましている御木本がめちゃくちゃ推せる……!

上手くいかなかった・失敗した、そんな過去を持った人や馬が前を向いていく様子が描写される本書は、読んでいて力が貰える気がします。

人智を超えた目を持つ占い師から運命を憂われようと、そんなものには負けない人間の強さときらめきを感じて心震えました。

ミスター・ワンは自分の占いの腕に絶対の自信を持っていますが、同時にその占いは彼を縛るものでもあったんでしょうね。

何かを諦めかけている人や、過去を悔やむ人にエールを送ってくれる、力強くも優しい物語でした。

まだまだ続編が書ける終わり方なので、今後の展開を楽しみに次回作を待ちたいです。
古内さんの別の作品も読んでみたいな。

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