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ときめきがつまった下宿生活『十一月の扉』

高楼方子(1999)リブリオ出版

毎年、十一月になると必ず読みたくなる本!

少女漫画やジブリが好きな人に是非お勧めしたいです。

下宿暮らし、気になる男の子、小説を書くこと…

女の子の好き!がたくさん詰まったときめきの宝石箱のような物語

目次

あらすじ

中学二年生の爽子は親の転勤をきっかけに「十一月荘」にて二か月間下宿生活をおくることになります。
十一月荘のオーナーのどかさん、シングルマザーの馥子さんとその娘の小学一年生のるみちゃん。キャリアウーマンな苑子さん。
4人との心地よい下宿生活のなかで、爽子は一つの物語を書きあげることを目標に日々を過ごします。

のどかさんに英語を習いに来ている気になる男の子、耿介との甘酸っぱい恋模様も必見です✧

感想

双眼鏡で遊んでいた時にふっと目に入ってきた美しいお家。

心のときめきにしたがって爽子がその家を訪ねていったところから物語がはじまります。

毎回思うのですが、こちらも爽子と同じようにワクワクさせてもらえる小粋な始まり方です。

偶然が重なって爽子はそのお家――十一月荘で少しの間暮らすことになるのですがその住人が本当に素敵な人たちで!

彼女たちのちょっとした言葉に読みながらハッとさせられたり、元気をもらえるんです。

子どもからおばあちゃんという年齢層の住人があつまっている十一月荘。

一番最初に読んだときは爽子ちゃんと同年代でしたがもう苑子さんや馥子さんの方が年齢が近くなっちゃいました。

そして、爽子の書く物語「ドードー森の物語」がまた可愛くって!

周りの人たちをモデルにした動物が登場人物になっているので現実世界とのリンクが面白いのです。

爽子の抱える学校や母親へのモヤモヤについては、子どもだった私も共感して読んでました。

そんな爽子が十一月荘での暮らしを通して変化していく様子が丁寧に描写されています。

それから、この物語のキーパーソンでもある耿介くん。

のどかさんに英語を習いに十一月荘に通いに来ている男の子なのですが、ひょんなことから爽子の書く物語の読者になったことで爽子との距離も近しくなります。

耿介は気さくなタイプではないちょっと皮肉屋な男の子なのですが、この子、とってもカッコイイのです。

のどかさんが耿介について語る部分が私はとても好きです。

打ちひしがれていた子が、

初めは少しずつ、それからどんどん、もとの自分を取りもどしていって、

笑ったり、ふざけたりしながら、

習うことに関心をもっていくっていう、

その勢いに、驚いちゃったの。

枯れそうだった草が、またぐんぐん伸びていくみたいで1

耿介が何故そんな状態だったのか…

ここで詳しく述べるのは控えますがこの部分、毎回胸をうたれます。

爽子と耿介、二人の関係が甘酸っぱくて可愛くて…

爽子にとって耿介は思い出すたびに胸をときめかせてくれる存在として輝き続けるんだろうなと思います。

ああ、青春…

この作品との出会いは私が小学生の頃、塾の国語テストで問題文として取り上げられていたことがきっかけでした!

テスト中なのも忘れて「なにこれ!すっごく面白い!」と夢中になって読んだことを今でも思い出します。

今に至るまで何度も読み返してきたのですが、何度読んでも面白いです。

きっとのどかさんの歳になってもこの本を読んでるだろうと思います。

大人が読んでも文句なしに面白い本ですが(私的に高楼さんの本は大人受けめっちゃいいと思います)私自身、爽子と同年代の時にこの本に出会い、すごくこの本の存在に助けられてきた部分があるんですね。今、中学生・高校生の女の子に強く勧めたい本です!

読書感想文を書く本としてもオススメ。おそらく感想もとても書きやすいはず。

最後に、大人になりたくなかった子どもの頃の私が何度も励まされていた、爽子の大好きなモノローグを。

わくわくするような楽しいことは、

この先にも、必ず、たくさんたくさんあるのだ。

高校生になり、大学生になり、大人になってゆく、

それは、きっと楽しいことに違いない。2

高楼方子(1999)リブリオ出版

Footnotes

  1. 高楼方子(1999)『十一月の扉』リブリオ出版 p.243
  2. 同上 p.281
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